「もう歳も歳やし、みんなお役御免や。」と話が始まり
「わしは、新制の中学の初めての生徒でなー」
私が、「昭和8年くらいのお生まれですか?」っていうと、
「昭和9年や。中学校でも冬は分校場で勉強や。先生は、金土しか来ない。前に聞いたことでわからん事尋ねようとしても、先生も教えんなんことがあるさかい、次の事に移ってそそくさと教えて帰ってしまう。・・・」とか「二十何人いた同級生がもう5人や(多分男だけ)。そん中で、(運転)免許持ってるのはもうわしがけや。もう乗るなて、子供に返納させられたのが一人。もう一人は、どういう加減か、隣の車が入ったる車庫に車入れてしもて、車壊して、それでもうあかんと自分で返納したらしい。この年まで長生きしてるけど、小中学校の時は弱くてな。二人で組体操してると、わしがなんにも出来んさけ、先生は「※※、もう休んどれ」っていつもよう座ってみんなを見てたわ・・・・」
とか、問わず語りの昔話をそんなに親しくもない私に続けた。話自体はそれなりに面白く、理路整然としてるのだが『あーこれ、二度目やなー』と、全然別の事考えてた。
長女だった祖母の末弟にあたる親戚のおじさん、大津で中学校の校長まで勤め上げた人、その人が、ある年のお盆の時、私に、教員で樺太へ行ってたこと、百瀬小学校(現マキノ南小学校)の校舎新築時の苦労話(今の校舎じゃなくもう一代前の私も通った木造校舎)、などなどを滔々としゃべり聞かせた。いつもは、寡黙謹厳実直っていう感じの人やのに、どうしたんやろう?と不思議に思ってたら、後から振り返ると認知症が始まって、確か次の年からはその息子さんが盆参りすることになった。
人は、向こうへ行くのが近づくと、誰彼構わず、色んな自分史を伝えたくなるらしい。
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